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【書評】『図解 樹木の診断と手当て』 堀大才・岩谷美苗【感想・要約】

図解 樹木の診断と手当て―木を診る・木を読む・木と語る

図解 樹木の診断と手当て―木を診る・木を読む・木と語る

 

正しい剪定位置は、幹の付け根ギリギリか?

適当に途中で切るか?

 

これには正解があるのです。

どちらも間違いです。

素人切り(適当)でもフラッシュカット(付け根切り)でもない適切な位置があります

その場所の解説は本書に譲ります。

 

 

以下、引用・要約と感想です。

 

 

毎日こまめに水をやるのは、木にとってあまりよいことではありません。

 

根に必要なのは水と酸素(!)です。

ヒトと同じだとイメージしましょう。

水を飲んでいる間は呼吸できません。

ずーっとずーっと水を飲み続けたら、ヒトは窒息します。

木も同じです。

ずーっと水びたしになっていては、呼吸ができません。

それが死因「根腐れ」です

 

「水はけのよい土が良い」と言われるのはなぜか。

土に空気が入るからです。

隙間がたくさんあるということです。

 

十分に乾燥(呼吸)したあとに、十分に水をやる。

かならず息継ぎが必要なのです。

 

 

タケノコはまったく光が入らない暗闇でも伸びることができます

 

竹やぶの竹は全てが地下でつながっています

ひとつの竹群なのです。

ですので、真っ暗闇でも、他の竹が光を得ることができる場所に生えていれば問題なしなのです。

本書にはしぶとい竹やぶを殲滅する方法が書いてあります。

地下茎には触りません。掘り返したりするわけではありません。

現実的な方法です。

ただそれでも1年では枯れません。枯れるのは2年目になります。

 

 

 

・夏場に枯れやすいのは、梅雨期に根腐れを起こしているというのもある。

 

梅雨期に深いところの根が酸欠で死に、そこに真夏の乾季がくるのです。

浅いところの根はすぐに乾いてしまうため乾燥に弱い。

そのときのために、木は深く根を張っているのですが、すでに梅雨期に枯れています。

日本の夏は樹木にとってはダブルパンチで枯れやすいのです

 

 

 

大枝が枯れると、それに対応した根も枯れます

枝と根はある程度対応しています。

どのように対応しているかは人間にはまだわかりません。

もし、工事で特定の太い根を切断したりした場合、その後の木の経過観察で対応関係はわかります。

根がダメになれば、枝がダメになり

枝がダメになれば、根もダメになる

という対応関係がある、ということを頭に入れておきましょう。

 

 

枯れた枝を落とすためには、材質腐朽菌は必要

木は必要なのがわかっている枝を狙って出すわけではありませんから、

日当たりや病害によって不要になった枝は、自ら落とさなければいけません。

そのために枝を落とす前から、落とす枝の根本に防御層をつくったり、栄養の通り道の変更を始めたりします。

しかし、木の仕事はそこまでで、実際に不要な枝にとどめを刺すのは、

材質腐朽菌もしくは風や動物なのです。

 

腐朽菌は樹木にとって単純に敵なわけではありません。

 

 

幹の梢端が風などで損傷を受けて枯れると、最も高い位置にある強い横枝が上に曲がりながら成長して幹のかわりをしようとします。 

 

 樹木にとって上へ上へ伸びるのは使命なのです。

最前線の芽がやられたら第二部隊が代わりをします

日本のマツがうねった樹形をしているのは、日本のマツにそういった特性があるというよりは、

日本には先端を食害する害虫が多いからのようです。

前線部隊が頻繁に入れ替わった結果としてのうねり樹形なのです。

 

 

・実生の木(種から育った野生の木)のほうが、移植は難しい

 

樹木の移植の際には、根鉢をつくります。

それはつまり、ある程度のサイズしか根を掘り取らないということです。

もちろん、全ての根とその周りの土を、相対的な位置関係を保存したまま移動させることができればそれは理想です。

しかし技術的にもコスト的にもそれは不可能です。

ですので次善の策として、ある程度のサイズで根を切って丸っこく土ごと掘って移植します。

そもそも移植された木や、挿し木などからつくられた植木は、

根鉢の形に沿って根を充実させています。

なので、移植が容易なのです。

逆に山に自生しているような実生の木の根は、複雑に伸び発達しています。

これを根鉢のサイズまでカットするとその木にとっては大ダメージなのです。

 

 

・木の傾きを、針葉樹は突っ張りで支え、広葉樹は引っ張りで支える

 

ヒトで説明すると、前に倒れそうになってる人を前から支えるのが「突っ張り」

後ろからつかむのが「引っ張り」です。

針葉樹はつま先側の幹が太く発達して、木を支えます。

広葉樹は根本の後ろ側の幹と根が強く発達して、土を掴むように木を支えます。

ですので年輪を見た時に、どちらに傾いていたかがわかるのです。

このようにして太った材をあて材といい、曲がりが強くでるので建築材としては嫌われます。

 

 

 

試みている植木屋絶対あるはず・・・。

とても気になるところです。

 

 

希少資源が、有り様を決めるのです。

人の社会も木の社会もそこは同じですね。

 

 

柔細胞がどうやって糖や他の物質を運ぶのかは、まだよくわかっていません

 

葉で光合成してつくる栄養が、どのように運ばれるのか、いまだにわからないのです。

逆にいうと、柔細胞で運ばれるということまではわかっているということです。

これは意外ですね。

 

 

常緑広葉樹は、冬の間も葉をつけていますが、わずかな光合成をするだけでほぼ休眠状態です。

そう考えれば、落葉樹とそう大きく異なる活動をしているわけではありません。

葉をつけていても寒さにやられないからつけているだけとも言えます。

 

 

水中貯木場は木を水に漬けることで木の腐朽を防いでいます

見たことあります。

丸太を水の上に転がしているのです。

腐りそうだからと、

切り口に水がたまらないように、フタをするのは無意味です。

逆に水につけることで材質腐朽菌が活動できなくなり、保存が効くわけですから。

 

 

図解 樹木の診断と手当て―木を診る・木を読む・木と語る

図解 樹木の診断と手当て―木を診る・木を読む・木と語る

  • 作者: 堀大才,岩谷美苗
  • 出版社/メーカー: 農山漁村文化協会
  • 発売日: 2002/09/01
  • メディア: 単行本
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