こんちにはサカトです🙂
今回は、こちらの論文をレビューします。
『キヌレニンとビタミンB6:糖尿病とうつ病の関係』
Kynurenines and Vitamin B6: Link Between Diabetes and Depression.
Journal of Bioinformatics And Diabetes - Open Access Pub
キヌレニン経路の詳細や、ビタミンB6との関係性、炎症・ストレスと糖尿病の関係など、非常に役立つ情報がたくさんの文献でした。
キヌレニン経路はけっこういろんな所に顔を出してきますので、ここで整理しておくと役に立つかと思います🙂
アブストラクトの解説【キヌレニン経路とビタミンB6】
まずはアブストラクト(要約)の一部を読んでみましょう。
最も重要なまとめなので、じっくり読んで用語に慣れてみてください。
うつ病と糖尿病との関連性は一般的に認められています。
文献や我々のデータは、うつ病の炎症性および/またはストレス因子がトリプトファン(TRP)からニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(NAD)生合成の基質であるキヌレニン(KYN)への変換をアップレギュレートすることを示しています。
KYN - NAD経路の主要な酵素のコファクターであるビタミンB6の欠乏は、KYNの代謝をNADの形成からキサントウレン酸(XA)とキヌレニン酸(KYNA)の生産へとシフトさせます。
ヒトおよび実験的研究では、XA、KYNAおよびそれらの代謝物がインスリンの産生、放出、生物学的活性を阻害することが明らかになっている。
ではこれを私なりにぽちぽちと解説してみましょう。
うつと糖尿病
うつ病と糖尿病との関連性は一般的に認められています。
うつ病と糖尿病には関連があります。
厚生労働省の運営している(らしき)『e-ヘルスネット』ではこのような記述があります。*1
これまでの調査によると糖尿病の約30%にうつ症状があるといわれ、糖尿病とこころの問題が重要視されるようになっています。
約 30% だそうです。
もちろん「糖尿病になったことが辛くて」とか「生活がストレスで」なども考えられますが、もっと本質的な関連があるかもしれないという観点ですね。
この文献では逆に「うつから糖尿病になる」という流れについて提案しています。
つまりうつのストレスから糖尿病に至る、というプロセスです。
一応、「がん」と「うつ」はどれくらい関連するかを検索すると…*2
”がんになると様々な身体症状が現れますが、同時に精神的苦痛も現れます。がん患者において20~40%がうつ病を合併することや、うつ病の発生率は一般と比較し2倍以上になることが報告されています。”
とのことで、「ん〜別に糖尿病が特別、うつと関わりが深いというワケでもないかな…🤔」とも思いつつですが。
続きをみていきましょうか。
炎症やストレスがキヌレニン変換を増やす
文献や我々のデータは、うつ病の炎症性および/またはストレス因子がトリプトファン(TRP)からニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(NAD)生合成の基質であるキヌレニン(KYN)への変換をアップレギュレートすることを示しています。
「炎症やストレスが『キヌレニン変換』を増やすぞ」という一文です。
「キヌレニン」とは、トリプトファン→ NAD への変換過程の中間物質ですね🙂
KYN - NAD経路の主要な酵素のコファクターであるビタミンB6の欠乏は、KYNの代謝をNADの形成からキサントウレン酸(XA)とキヌレニン酸(KYNA)の生産へとシフトさせます。
ビタミンB6はこの経路の主要な酵素の補因子である。
ビタミンB6が不足すると、XAとKYNAが増える。
ヒトおよび実験的研究では、XA、KYNAおよびそれらの代謝物がインスリンの産生、放出、生物学的活性を阻害することが明らかになっている。
XA、KYNAが増えると、インスリンの働きが阻害されてしまう。
さて、ここまでの流れを整理するとこうです。
うつ → ストレス・炎症 → キヌレニン経路活性化 → B6枯渇 → XA・KYNA 増加 → インスリン阻害 → 糖尿病
OKですかね?👀
キヌレニナーゼ
P5P欠損によるキヌレニナーゼのダウンレギュレーションは、3-HKの代謝をNADの形成からXAとKYNAの生産へとシフトさせる。
P5PはビタミンB6の活性型です。
P5Pは「キヌレニナーゼ」の補酵素ですね。
ちょっと上記の図では微妙にわかりづらいので、他から図を持ってきました。こちらの方が詳しいです。
この図の「kynureninase」です。
小さくてわかりにくいかもしれませんが、この図をじっくり見て頭に入れてみてください🙂
キヌレニナーゼが阻害されたら、上のXAとKYNAが増えるのがわかると思います。
要するに、ビタミンB6が不足するとXAとKYNAが増えるぞ、ということ。
そしてそれは?
インスリン阻害に繋がるのでしたね。
NAD不足がTDOを促進させる
NAD が TDO を阻害することを考えると、P5P 欠損による NAD の形成低下は TDO をさらに活性化し、KYN の産生を増加させる可能性がある。
これは簡単な話で、「最終生成物」のNADはTDOを阻害します。
TDOは経路の最初の酵素ですね。
「もうNADは十分ダヨー」ってことですね。
逆に考えると、NADが不足するとTDOが活性化されてキヌレニン経路を動かすことで、NADを補充しようとするワケです。
そうなるとますますB6の必要性は上がりますし、とはいえ枯渇してますからKYNAとXAがさらに蓄積します。
上級向けにちなむと…
QA → NAD の間には実はナイアシンがあります。
さて、つまりどういうことでしょうな…フフフ
さらなるマイナスのループ
さらに、XAはビタミンB6からのP5Pの形成を触媒する酵素であるピリドキサールキナーゼを阻害することで、P5P欠乏症を永続化させる可能性があります。
XAはビタミンB6を使える形であるP5Pに変換するための酵素ピリドキサールキナーゼを阻害するらしいです。
そうなるとP5P欠乏はさらに深刻なものになってしまいます。
さらによくないフィードバックがかかるってことですね😶
B6をかなり大量摂取することで著効するケースがあるようです(何に?)。
それはもしかしたら、キヌレニン経路中間物質蓄積を介したP5P利用障害なのかもしれませんね。
XAが蓄積した状態なら、最初から活性型のビタミンB6を入れていく必要性がありそうです🙂
インスリンの活性が半分に!?
インスリンとのキレート錯体(XA-In)の形成。抗原としてのXA-In複合体は、インスリンと区別がつかないが、純粋なインスリンよりも49%活性が低い。
XAはインスリンと錯体と作り、その活性を約半分に低下させるようです。
これはインスリン抵抗性のひとつと考えてよいでしょう。
これはよろしくないですね😶
XA(キサンツレニン酸?)の蓄積はろくなことにならなさそうです。
ベルベリン は IDO を阻害
最も強力なIDO阻害薬はベルベリンであり,インドや中国の医学体系で広く用いられているハーブであるBerberisaristataから単離されたイソキノリンアルカロイドである。
これは面白いですね。
ハーブの『ベルベリン』は IDO を阻害するようです。
ベルベリンはオウバクという漢方の主成分ですね🙂
キヌレニン経路そのものを阻害できるようです。
上級向けにちなむと、キヌレニン経路そのものの阻害が「正義」だとは僕は思いません。
NAD生産ももちろんそうですし、例えばKYNAが組織修復に関わっていることが示されている実験もあったりして、一概には言えません。
あと大切であろう観点として、肝臓でのKY経路なのか肝外でのKY経路なのかで意味が違ってくるはずです。
IDOは肝外組織でのKY経路に主に関わるてあろう酵素です。TDOが肝臓メインですね。
この辺り、柔軟に考えていきたいですね🙂
ではどうする?【キヌレニン経路とビタミンB6の答えは】
とはいえ、炎症性サイトカインにより肝外KY経路が活性化したり、B6欠乏などでキヌレニナーゼが阻害されたりするのは、疾患と深く関わっていそうです。
「ではどうすればいいか?」を私なりにいくつか提案してみましょうか。
- ともかくB6は切らさない方がよさそう
- B6欠乏ループが完成していることが疑われる場合、活性型B6がマストになるかもしれない
- ナイアシン・NMN・NR 摂取で経路のダウンレギュレートを図れそう
- ベルベリンはいかにも使えそうではある
- とはいえ健常者がトリプトファン制限は違くない?
といったところでしょうか。
あとは各々、考えてみてください🙂
それではまた。
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