サカトのバイオハック

遺伝子栄養指導者サカトのブログ

大豆製品のトリプシンインヒビター残存量は?【全8製品の総まとめ】

大豆製品のトリプシンインヒビター残存量は?【全8製品の総まとめ】

こんにちはサカトです🙂

今回は『大豆製品のトリプシンインヒビター残量は【全8製品の総まとめ】』というタイトルでお伝えしていこうと思います。

トリプシンインヒビターって何じゃ?🤔

という方はまずこちらの記事をお読みください🔽

www.sakato0927.com

ざっくり理解していただいたところで…

今回はトリプシンインヒビター問題の中心である「大豆製品」について、深炒りしていこうと思います。

大豆製品のトリプシンインヒビター残存量

毎日のように食べている大豆製品…

その中にどれくらいのトリプシンインヒビターが含まれているのか、気になるところだと思います。

急いでいるの人のために、最初に「確かなところ」をお伝えしましょう。

  • 「生大豆」や「豆乳」はハイリスク
  • 発酵された「味噌」「納豆」はほぼノーリスク
  • その他はグレー

と、最初にお伝えしつつ…以下、大豆製品について細かく回答していこうと思います。

みなさんが特に気になるのは以下の大豆製品でしょうか。

生大豆・豆腐・きな粉・枝豆・豆乳・味噌・おから・納豆

この8製品については最後に改めてキチンとまとめます💪

『大豆の加工とトリプシンインヒビター』

さて、まずはこちらの論文を参照してみましょう。

『大豆の加工とトリプシンインヒビター (1)』

>> https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010824980.pdf

図を引用します。

とりあえず下の資料からまとめますと、こんな感じになります🔽

  • 豆乳の TI 残存率は20%
  • 木綿豆腐は11%
  • おからは11%

また上の資料を見ると、きなこも豆腐と同程度かやや低いくらいです。

上の資料にしか「きなこ」はないので、計算しないといけませんね。

木綿豆腐の平均TIU「1,28」ときなこの TIU「1」の比と、木綿豆腐の「残存率11%」から計算して

11 * 1 / 1,28 = 8,59375

となり、約8,6% の残存率とみなせそうです。

※資料により数字が異なるので参考程度に

トリプシンインヒビターについて、山本義徳『業績集』では

では、僕のブログではおなじみ「モ先生」の本ではどう書かれていたか改めて確認してみましょう。


>> タンパク質とアミノ酸 前編: 山本義徳 業績集 2 | Amazon

山本義徳さんの業績集で「参照されていた論文」はこちらです🔽

>> Trypsin inhibitor activity in commercial soybean products in Japan

ここから引用しましょう。

大豆全体の平均TI活性は4,819U/100gで、大豆全体に対する製品の平均残存率は、もめん豆腐2.5%、寄せ豆腐3.4%、きぬごし豆腐4.3%、じゅうてん豆腐7.9%、豆乳13.0%、納豆0.7%、しょうゆ0.8%、みそ0.3%であった。豆乳を100℃で加熱すると、TI活性は10分で11%、20分で5%に低下しました。

さっきの文献とは数字が違いますが、まぁ何が高くて何が低いかは一致しています。

味噌・醤油・納豆の「発酵製品」のTIの低さが目立ちますね。

この理由に関しては、先日ツイートしました。

ということで、トリプシンインヒビターもまた「タンパク質」であり、納豆菌のプロテアーゼによって分解されるのですね。

やはり「発酵」は最強ですね。

「加熱」の比ではない働きっぷりです。

焙煎のタイミングによるトリプシンインヒビター活性の大きな違い

さてTI不活化における重要なファクターが興味深かったので、紹介します。

こちらの論文に目を通してみましょう。

『大豆粉のタンパク質消化におけるトリプシンインヒビター活性の影響』

>> 富山短期大学学術機関リポジトリ

これは「焙煎」の工程のある「きなこ」製造での話ですね。

例によって図を引用します。

この図が何を意味しているかというと…

粉に挽いた「後に」焙煎をしても、ほとんどトリプシンインヒビター活性が低下しません。

ということです。

これは非常に意外で、かつ重要な結果ですね。

「豆を粉砕する前に加熱(焙煎)する」

「TIU 141」が「TIU 6,6」まで落ちているということは、生大豆の約4,6% まで失活しているということです。

「4,6%」は、2つ目の資料の豆腐のTI活性とそれなりに同程度であり、1つ目の資料とも整合性が取れそうです。

そしてその差が、ここでは出てきませんが「大豆粉」と「きなこ」の TI 活性の大きな違いとして現れているようです。

>> きなこの製造工程 | きなこ・七味・青のり 向井珍味堂

こちらのページで「きなこ」の製造工程を見てみると、粉砕より先に焙煎を行なっています。

ちなむに同論文において、お酢につけておいてもある程度 TI は失活するようです(程度は小さいですが)。

ところで先の論文引用で実はこう書いていました。

”豆乳を100℃で加熱すると、TI活性は10分で11%、20分で5%に低下しました。”

これは「粉砕した後の加熱」に該当しますね。

「あれ?失活してるじゃん」という話なのですが、今回の論文ではあくまで「粉の焙煎」なのですね。

豆乳の状態でもたっぷりと加熱してやればそれなりに失活はするようです。

このあたりは「量の検討」が重要であるとともに、大切な視点をひとつ。

焙煎に比べて長時間の煮沸は膨大なエネルギーが必要です(たぶん)。

製造コストの話が絡んできているのだろうと思われます。

だから「きなこ」はあんなに安いのではないかな🙂

さらにちなむと、以下の論文では「なぜそうなるのか」をかなり頑張って検討しています。

>> 焙煎大豆粉のタンパク質の消化とトリプシンインヒビター活性に及ぼす粉砕と加熱処理の影響

結局はっきりとはわからなかったのですが、著者の考えとしては以下のものです。

ダイズを焙煎してから粉砕するか,粉砕してから焙煎するかによってTIが 容易に失活したり,失活しなかったりするということは,TIは本来,不活性体として生大豆組織中に存在していて,細胞破壊を受けた際に活性化すること,また,一旦,活性化したTIは熱安定性を増し150°C 程度の焙煎処理では容易に失活しないのではないかと考えられた.

すりつぶした時(=食べられた時)に不活性型のトリプシンインヒビターが活性型になり、活性型TIは熱安定性を獲得するのではないかということです。

かなり難しいですが面白いのでぜひ文献を読んでみてください🙂

「枝豆」のトリプシンインヒビター

ここまで、枝豆についての記述がありませんでしたね。

けっこう気になるところでしょう。

ちなむに枝豆とは…

未熟な大豆を鞘ごと収穫して茹でたものです。

なので同じ「大豆」ですよ〜、よろしくお願いします。

というわけで探してみたら、ありました。

>> 枝豆のトリプシンインヒビター活性値と物性試験

では、引用します。

というわけで、2分くらい茹でたらTIはほぼ失活するようです。

「丸ごと加熱」の条件を満たしますし、特に心配はなさそうですね🙂

下記文献によると、完熟大豆と比べた時のTIの量に関してはどうも大きくなった枝豆の方が多そうです。

>> 枝豆のトリプシンインヒビターについて-特に栽培中の消長

いちばん動物に食べられたくないタイミングだからかな!?

ですのでまぁ、TIを失活させたいのならそれなりにしっかり茹でてから食べた方が良さそうですね。

いくつか「枝豆の茹で方」を検索してみましたら…3〜5分くらい茹でている様子。

そもそも枝豆でお腹を壊したとかそういう話を聞かないですし、問題なさそうですね👍

大豆のトリプシンインヒビター残量のまとめ

最後にまとめてみましょう。

どこのデータを持ってくるかでちょっと変わるのですが…とりあえず、2番目の資料の数字を軸にしてみましょう。

だいたいこんなもんかなと思います。

生大豆:100%
豆乳:13%
木綿豆腐:2、5%
おから:木綿豆腐同等2、5%
きな粉:木綿豆腐よりやや下 約2%
枝豆:3分茹でで1%程度
納豆:0、7%
味噌:0、3%

2つ目の文献の「豆乳13%」を基準にしてみました。

きな粉は1つ目の文献にて「木綿豆腐よりやや低い」という点で評価。

枝豆は枝豆論文の結論からです。

まぁ、とりあえずはこんなもので許してもらおうかと。

  • 「生大豆」や「豆乳」はハイリスク
  • 発酵された「味噌」「納豆」はほぼノーリスク
  • その他はグレー

でしたね。

日本人は豆腐などを普通に食べていることを考えると、「豆腐以下のTI活性のものは特に気にしなくていい」みたいな線引きができそうです。

とはいえ豆腐や湯葉などからタンパク質を100g 摂取したりなどはしていないでしょうから、ここは「量の問題」かもしれません。

モ先生は「プロテインがわりにきな粉はやめといた方がいいでしょう」と記述しています。

確かにアスリート的な量のタンパク質を摂取する場合は、トリプシンインヒビターが問題になってくることもあるかもしれないですね。

しかし普通に食事として「おから」や「豆腐」「きな粉」を食べても全く問題ないでしょう。

そして改めて、「発酵」は最強ですと。

で、「結局どうなのか」の結論(私の考え)はまだこの記事では書きません。

なぜならそもそもトリプシンインヒビターが体に良いのかどうなのかを考察していないからですね。

次回はいよいよ本丸、「そもそもトリプシンインヒビターは体にいいのか悪いのか?」を考察していきます。

正確には「良いか悪いか」ではなく「バイオハックに使えるか」ですね。

それではまた。

追記:2021/05/30

トリプシンインヒビターに関する総まとめ有料noteを書きました。

関連3記事のリンクと、全てを踏まえての私の個人的意見、そして私自身は実際どのようにしているのかをまとめました。

よろしければご覧ください。

note.com