追記:2021/03/12
どうもサカト(@Sakato0)です。
先日、Twitterで以下のつぶやきをしました。
”Topical and oral administration of niacin has not been associated with increases in blood levels of either histamine or bradykinin, suggesting that niacin-induced flushing is not mediated by mast cells.”
— サカト @ アンチエイジング (@Sakato0) February 14, 2020
ナイアシンフラッシュはヒスタミン放出ではない😬https://t.co/R4IC0u6nny
もっともっとたくさんの人が驚いてくれるだろうと期待に胸を膨らませながら投稿したのですが、数人しか反応してくれなくて寂しかったので、今回はこれについてもっと深堀りしていこうと思います。
ナイアシンフラッシュの原因・理由はヒスタミン放出ではない
ナイアシンフラッシュの作用機序は、マスト細胞のヒスタミン放出ではありません。
ヒスタミン放出ではないのであれば何なのか。
なぜヒスタミンではないと言えるのか。
以下で説明していきますね。
ホッファーさんの説:ナイアシンフラッシュはマスト細胞のヒスタミン放出
そもそもは栄養療法の祖であるホッファーさんが
「ナイアシンフラッシュはヒスタミン放出だ」
と言ったのが始まりでしょうね。
確か、書籍の中でそう言っていたように記憶しています。
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ヒスタミンはくしゃみや鼻水を引き起こす、アレルギー反応の主役ですが…
ヒスタミンによる経路をブロックしてもナイアシンフラッシュは起こった
『米国カリフォルニア州アテローム性動脈硬化症研究センター退役軍人局ヘルスケアシステム、および米国カリフォルニア州アーバイン校医学部』による2009年の文献
には、このような記述が見られます。
ヒスタミンまたはブラジキニンの放出は、一酸化窒素の実質的な上昇を引き起こし、それは、環状グアノシン一リン酸(cGMP)の細胞内放出と血管拡張につながります。NO産生に重要な酵素である内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の除去は、マウスのナイアシン誘発性紅潮を停止しませんでした。
ちょっとややこしい文章ですが
- ヒスタミンが分泌されたのなら、NO発生によって血管拡張が起こっているはず。
- しかし、NOを産生するのに必要な酵素を取り除いてNO産生をできなくしたマウスでも、ナイアシンによってフラッシュが起こった。
- つまりナイアシンフラッシュはNOとは別の経路で起こっている
という文章です。
ナイアシンフラッシュにNOは関係なく、ヒスタミンによるものではないことが示されているわけです。
では、ナイアシンフラッシュによる皮膚の紅潮は何によって引き起こされているのでしょうか?
表皮ランゲルハンス細胞のGPR109Aによるフラッシュ【ヒスタミンではない】
それは、ヒスタミンではなくプロスタグランジンによって、です。
そして、マスト細胞ではなく、表皮ランゲルハンス細胞によって、ということになります。
下記論文から引用します。
本研究では、PUMA-Gを欠くマウスはニコチン酸による潮紅を示さなかったことを示しています。さらに、シクロオキシゲナーゼ1型の非存在下では、ニコチン酸に反応した潮紅も抑制されました。そして、プロスタグランジンD(2)(PGD(2))およびプロスタグランジンE(2)(PGE(2))受容体を欠くマウスは、紅潮反応が減少した。
PUMA-G とは GPR109Aのをことを指します。
ここで示されていることは以下の3つです。
- GPR109Aがないマウスはナイアシンでフラッシュしない
- COX-1のない状態ではフラッシュが抑制される
- PGD2・PGE2受容体のないマウスもフラッシュが抑制される
まとめると、こういうことです。
ナイアシンは、皮膚のランゲルハンス細胞という樹状細胞膜上に発現している受容体「GPR109A(Gプロテインレセプタ109A)」のリガンド(くっつくやつ)であり
GPR109Aの活性化を通じて、細胞膜上からアラキドン酸を遊離させる。
COX−1の働きなどによってPGD2・PGE2などのプロスタグランジンがアラキドン酸から生成される。
毛細血管のPGD2・PGE2受容体に、プロスタグランジンが受容されて、血管拡張などのフラッシュが生じる。
プロスタグランジンなどの「エイコサノイド」は極めて半減期が短く、すぐに分解されるため、反応は局所的なものとなる。
👆の「vasodilatation」は血管拡張のことです。
筋トレ野郎にはおなじみの「バスキュラー」と同じ言葉ですね。
「ナイアシンフラッシュの原因はヒスタミン放出ではない理由」のまとめ
こんな感じです。
ま、だから何だという話ではあるのですがね。
ちなみにですが、ナイアシンの効能がヒスタミンと関係ないのかどうかはまた別の話だと思います。
ここでは、あくまで「ナイアシンフラッシュの作用機序」の話をさせていただきました。
ナイアシンの効能とヒスタミンは何か関係があるかもしれません。
本当はそこまで明らかにしてから執筆すべきなのですが、ごめんなさい。体力が尽きてしまいました。
その辺りはまた、追って報告いたします。
お疲れ様でした。
追記:2021/03/12
半分正解で半分間違いだった、かもしれません。
「ヒスタミンの経路を止めてもフラッシュした」という時点で、思い込みが生まれてましたね。
— サカト @ オンライン遺伝子栄養指導の人 (@Sakato0) March 11, 2021
まさか2経路からフラッシュさせてたとは🙂
やられました。 https://t.co/TucydvnmoZ
こちらの図をご覧ください。
この記述が正しいのであれば…
ナイアシンフラッシュ = PGE2を介した血管拡張 + PGD2を介した血管透過性亢進
ということのようです。
ヒスタミンなしでもフラッシュは起こるので、「ヒスタミン放出ではない」も間違いではないのですが…結局ヒスタミンも出て関わってるようですね。
「ヒスタミンを出しておくためにナイアシンを飲む」が間違いということにはならないようです🙂
失礼しました。
<参考>
http://www.clnakamura.com/%E6%9C%AA%E5%88%86%E9%A1%9E/%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%82%B7%E3%83%B3/
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